蕨、戸田、川口、鳩ヶ谷の古を探る

金錯銘鉄剣（辛亥銘鉄剣）と埼玉（さきたま）古墳群　[１３]

この鉄剣銘文に対する反響は大きいものでした、一振りの鉄剣の１１５文字は、幾百万倍かの文字の活字を動かせました、新聞のニュースから、学芸欄や文化欄の記事、週刊誌の記事、シンポジュウム、講演会、単行本の出版と続きました

この１１５文字をめぐる課題は、古代史や古代国語学の解明の上に、いろいろな示唆を与えました、鉄剣の出土した古墳は、従来の多くの古墳とは異なった特異な性格をもつものとして、考古学の上から高く評価されたからでしょう、５世紀後半から６世紀前半にわたる日本の政治や文化における東国の地位が考えられるからです、また、文字の使用、金象嵌の技術等をめぐって、大陸との歴史や文化関係が明らかになるであろうからです

さらに具体的に、５世紀後半期に登場した埼玉古墳群の首長たちの『日本書記』に記される武蔵国造（くにのみやつこ）家との関係、武蔵国造の乱、或いは北関東の毛野（けぬ）や南関東の武蔵との関係、中央の大和政権との相互の関係の考察、判明に大いに役立つからでしょう