入倉伸夫のシニアライフ-蕨市塚越-

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蕨、戸田、川口、鳩ケ谷の古を探る

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鳩ケ谷の古を考える

②里字屋敷添第3遺跡・屋敷添1226-1地点の砂脈(噴砂)の考察(続々)

砂脈の分布は平面的に見ますと、東地区の南部の南北20m、東西50mの間に限定されています、そして、大型の幅の広い長いものが南側にあり、幅の狭く短いものが北側に分布しています、配列は全体的に東西方向を示し、ほぼ平行して発達しています

この地区には住居跡のような遺構はなく、大小の溝 と井戸穴であり、砂脈の形成による変位は認められません、従って、この地区の遺構は砂脈形成以後に作られたものと考えられます

砂脈の方向分布を見ると、東西方向に集中しており、ほぼ並行して発達しています、砂脈は地下の砂層の液状化により形成されたものと思われ、削平面で観察される砂脈と地下の砂層との壁面を観察してみますと

砂脈列の南部の断面であるトレンチAでは、構成する地層は自然堤防堆積物で、泥層と砂層の互層で構成されており、見かけ上はゆるく南へ傾いています、トレンチ壁面でみると、上部の砂層は薄い泥層を挟みほとんど液状化していないようにみられます、しかし、下部の砂層は中に薄い泥層を挟むが、この泥層はちぎれており、液状化による流動のために攪乱されてちぎられた構造を示しています

砂脈列の北部の断面で4列の砂脈が見えるトレンチBは、トレンチAと同様に砂・泥互層で構成された地盤を示し、見かけ上ゆるく北に傾斜する構造となっています、4本の砂脈はそれぞれ異なった砂層から噴き上げており、ここでは表層近くの上部の砂層も液状化(流動化)しており、特に左方(北側)の砂脈は下方から噴き上げたもので幅広く、両側の地層の間に食い違い(変位)が認められます

遺跡の基本土層調査のため、調査地区東部の周囲にC~Gの深堀を行いましたが、その深堀穴壁面を見ると、南側のG地点では砂脈の延長上でもあり、トレンチA・B地点と同様に幅広い砂脈が認められました、また、E地点では、北縁である地山の黄褐色泥層の中に不規則な形態を示す砂質層が見られ、液状化による混交とも考えられますが、下位の砂層との関係は判然としません

以上のような調査結果をもとに、砂脈形成時の地形及び形成年代を検討します

砂脈は、地震に伴う地下の砂層の液状化により形成され、液状化は地下水環境とともに地震時の地下の圧力分布に支配され、また、当時の地形や地質構造にも関連します

堀口萬吉氏は、妻沼低地における古代(9世紀)地震について検討し、砂脈を作る地下の割れ目について、地震時の歪みの結果生じた割れ目とし、割れ目の系統を「平行系」と「交差系」とに区分しています、今回の第3遺跡の砂脈は、同一方向を示し、この区分の「平行系」に属するものと思われます

「平行系」の発達は、傾斜地形や傾斜構造を示す地域に多く、地点に働く重力により表層部が地すべり的に下方に流動するために割れ目ができ、液状化した砂が噴き上げて噴砂あるいは砂脈を形成するものと考えられます

里字屋敷添第3遺跡は自然堤防の後背湿地側にあり、ゆるく北方へ傾斜する地形のところに位置しています、この地形は「平行系」の発達する条件と合致しています、本遺跡における砂脈の発達状況から考えると遺跡の北部は後背湿地の低平な地形となり、南部には更に自然堤防の高まりがあったと想定されます、現在の地形は耕作などにより改変されていますが、当時の集落は南部の高いところに形成され、北側の後背湿地が水田として耕作されていたと思われます

また、地震の年代ですが、今回の里字屋敷添第3遺跡は、埼玉県南部での新発見とも云えるものです、そのため、本遺跡のみの資料では、地震の年代を限定できない状況です、現在のところ、大溝の資料から近世以前の大地震によるとしか云えません

最後に、自分の勝手な想像で何の根拠もないのですが、地震の年代について気になることがありますので申し上げます、それは、鳩ケ谷周辺、戸田などの低地性遺跡において古墳時代前期の遺構、遺物は出土するのですが、古墳時代後期では、それらが殆ど見られないことです(これはこの地域周辺の考古学関係者の共通の疑問ですが)

古墳時代前期に存在した集落が何かの理由で消滅したのか、移動したのか、(政治的理由による移動とか、人の生活できないような天変地異ー地震などによる地形の変化ーがあったのではないか)いずれにしても、長年の苦労の末に築いた集落が消えるということは、当時の人々にとって大変ショッキングなことがあったのだと思います、もしかすると、噴砂を伴うような大地震古墳時代後期に鳩ケ谷周辺にあった、今回の砂脈の発見はその時のものではないかとも思っています、なんの証拠もないので、考えすぎかもしれませんが、ちょっと気になるところです